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東京高等裁判所 昭和60年(行ケ)174号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実(特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨および本件審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。

二 本件審決を取り消すべき事由の有無についての判断

1 当事者間に争いのない本願発明の要旨、成立に争いのない甲第三号証(昭五七―二八三九〇号特許公報)および第四号証(昭和五九年六月九日付手続補正書)によれば、本願発明は、耐熱衝撃性、触媒担持特性、触媒活性、耐被毒性および耐熱性に優れたコージエライト系低膨脹性多孔質セラミツクを製造することを目的とする同セラミツクの製造方法に関する発明であることが認められ、他方、成立に争いのない甲第五号証(特開昭五一―五三一三号公開公報・引用例)によれば、引用例記載の発明は、名称を「コーデイエライト系セラミツク基材の製法」(以下引用部分をのぞき「コージエライト」と表記する。)とする発明であつて、自動車排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物等を転化させる装置中に用いる触媒活性物質用基材等として使われる蜂巣状焼結セラミツクの製造方法であることが認められ、引用例記載の発明は、その組成が、「Mgo―Al2o3―sio2系のコージエライト主相域中又はそれに近い所(少なくとも九〇体積%のコージエライト相)にあり、酸化物を基にして九ないし二〇%Mgo、三〇ないし五〇%Al2o3及び四一ないし五六・五%sio2からなるセラミツクの製造方法」(この点の記載のあることは当事者間に争いがない。)である。

2 マグネシア源原料の粒度について(取消事由1)

まず、引用例に本件審決認定のとおりの記載のあることは当事者間に争いがないところ、引用例における生成物の組成に関する前掲記載に照らし(成分組成および量比は生成物と出発原料とで変わらない。)、引用例記載の発明における出発原料が本願発明の出発原料と同一であるシリカ(sio2)、アルミナ(Al2o3)およびマグネシア(Mgo)をそれら生成物中の組成に相当する量を含むバツチを用いるものであることは明らかであるが、原告は、右の出発原料のうちのマグネシア源原料についてその平均粒子径の違いを主張するので、この点について検討する。

(一) 前掲甲第三、四号証によれば、出願公告当時の特許請求の範囲においては、マグネシア源原料の平均粒子径は五~一五〇ミクロンと規定されていたところ、昭和五九年六月九日付手続補正書によつてマグネシア源原料の平均粒子径を「二一~一〇〇ミクロン」と限定するとともに、発明の詳細な説明欄に「本発明で用いる平均粒径と言うのは、アンドレアゼンピペツト、セデイグラフ等の沈降法による累積粒度重量分布曲線において全体の五〇%に相当する粒子径をいい、第4図に示す如くである。」(手続補正書五頁2)等の記載を追加し、第4図を補充したことが認められる。

(二) 引用例に、「粒子は全てマイナス三二五タイラーメツシユであるのが好ましい」との記載があり、右にいうマイナス三二五タイラーメツシユが四四ミクロンの篩下に相当することは当事者間に争いがなく、また前掲甲第五号証によれば、引用例記載の発明に用いるすべての原料の粒径の下限に関して、右の記載に続いて、「製品の亀裂生成を避けるためには一ミクロンより大きな平均粒径(特に粘土)とする。」(四頁左欄一三行ないし一五行)との記載があり、また、引用例記載の発明に用いられるマグネシア源原料である滑石(タルク)について、「ここで用いられる滑石は、未加工滑石及び/又は予かじめか焼した滑石でよいが、滑石は亀裂生成の挙動に悪い影響を持つようには見えない。」(四頁右欄四行ないし七行)との記載のあることが認められる。

ところで、成立に争いのない乙第一号証の一ないし三(昭和四二年四月一五日社団法人窯業協会発行「非金属鉱物の選鉱法」)及び第二号証の一ないし三(昭和五三年五月一五日株式会社産業技術センター発行「分級装置技術便覧」)によれば、タルク(滑石)は、まず、原料の大まかな選別洗浄が行われたのち、粗砕機にかけられ、更に微粉砕機によつて粉砕され、分級されて(一般には一回の分級で製品化される。)中間製品等として得られるものであること、タルクの性状や形状は、原料の産地、粉砕機の種類、粉砕の程度、分級操作の違い等によつて相違するが、一般的にタルク製品の粒度は、マイナス七四ミクロン九八%、マイナス四四ミクロン九八・五%、マイナス四四ミクロン九九・五%の三種に分類されているが、いずれの場合も一五~三五ミクロンの微粉を相当量含有していること、および乙第二号証の二の四七七頁の図5(a)(北鮮タルクを分級した粒度分布)によると、分級後の粗粒分については、四四ミクロンの篩下分の平均粒子径は約三〇ミクロン強を示しており、図5(b)(一般的なタルクを分級した粒度分布)における粗粒分の曲線をみると、四四ミクロンの篩下分の平均粒子径は二一ミクロンの前後であることが認められる。そして、成立に争いのない甲第三号証(本願公報)、第四号証(昭和五九年六月九日付手続補正書)第一一、一六号証(昭和五四年五月一二日丸善株式会社発行「粉体理論と応用」七七頁、四八頁)及び弁論の全趣旨を総合すると、我が国においては、平均粒子径の測定には古くから広く沈降法が行われ、格別の定義を措くことなく数値が掲記されているときには、これによるものと認められることに徴すると、前掲乙号各証の数値は、右の沈降法に基づくものと推認するのが合理的であり、これに反する証拠はない。

引用例記載の発明においては、粒径の上限として四四ミクロンと規定しているうえに、平均粒子径(測定法についてはのちに右認定に詳述する。)としてではあるが、その下限にも関心をもつていることは、前記認定に係る粒径についての記載から明らかであるから、引用例記載の発明においては、一般に市販されているタルクの製品に限らず、粉砕、分級操作を経て一応調整される工業用粉砕体としてのタルクをも予定し、これをもとにして、四四ミクロンの篩通過分で、平均粒径一ミクロンより大きいものを広く用いるものと推認するのが相当であり、しかも、前掲甲第五号証によれば、引用例記載の発明は、使用するタルクの産地について特段の限定を付していないものと認められるから、引用例記載の発明においては、前掲乙第二号証の二に記載された図5(a)及び図5(b)にみられるタルクをも出発原科として予定しているものと認めて差支えないものというべきである。原告の主張する前掲乙第二号証の二の図3は、同号証によれば、市販されている十分に調整されたタルクの製品の一般的な粒度分布を示したものであると認められるから、同図をもつて引用例記載の発明で用いられるすべてのマグネシア源原料の粒度分布とみることはできないから、この点に関する原告の主張は理由がない。そうすると、引用例記載の発明におけるマグネシア源原料である滑石(タルク)の粉粒には、沈降法による測定算定による平均粒子径が二一ミクロン以上の数値のものが当然に含まれるものと認めるのが相当である。この点、原告は、四四ミクロンの篩下の平均粒径はせいぜい一〇ミクロン前後であると主張し、その根拠として、甲第六号証(昭和五〇年九月一五日共立出版株式会社発行・橋本謙一ほか著「セラミツクスの基礎」)の記述を援用するので、その内容を検討する。成立に争いのない甲第六号証によれば、同号証には粘土の粒径分布に関する記述があり、粘土粒子の球径は懸濁液中の粘土粒子の沈降速度により求められ、粘土粒子が非球形である場合も同一の沈降速度を有する球の径で代用することができ、これを非球形の粒子からみて等価径ということ、粘土の等価径の測定にはアンドレアセンのピペツトが便利であること、一般に粘土の粒径分布曲線は最頻値が細粒側に偏して正規分布に従わないこと等が記載され、図7・2のc直線で示された等価径約五〇ミクロン以下のものにおけるその平均粒径が約一〇ミクロンとみられ、粒径分布が単純でないC+Aの等価径五〇ミクロン弱のものの平均粒径がほぼ二ミクロンであること等の事柄が理解できるが、図7・2に直線もしくは曲線で示されたものがどのような試料(サンプル)であるのかについては何ら記載がないので、前掲甲第六号証の記述をもつて、まず、粘土一般についての説明とみることには疑問が残るうえに、更に、ここに記述されたことを滑石(タルク)の粉粒体に敷延し得るとする根拠も見い出せない。したがつて、原告のこの点の主張も採用できない。

(三) 引用例記載の発明においては、マグネシア源原料の具体例としてフアイザーMP九六―二八モンタナ滑石(平均粒径二〇ミクロン)とフアイザーMP九九―五四セルコン(か焼滑石)(平均粒径二五ミクロン)とが記載されていることは、当事者間に争いがない。

(1) 成立に争いのない甲第一〇号証の三(ロドニー・I・フロストの供述書)、甲第一六号証(昭和三七年一二月二五日丸善株式会社発行「粉体 理論と応用」)および甲第二〇号証(セラミツクス・プロセツシング・ビフオー・フアイヤリング」)を総合すると、粉粒体の測定について、米国においては懸濁液中の粒子が小孔通過のとき生ずる抵抗変化を利用する電気的検知帯法であるコールターカウンター(商品名)を用いた測定法が比較的行われており、引用例記載のフアイザーMP九六―二八モンタナの平均粒径の二〇ミクロンも、フアイザーMP九九―五四セルコンの平均粒径二五ミクロンも、このコールターカウンター法による数値であることが認められる。したがつて、その平均粒径の数値は、粒子の流体中の沈降速度を利用した本願発明における沈降法に基づく数値の意義と異なるのは当然である(粒度を扱うときには、それがどのような測定法に基づく数値であるかを十分に吟味することが必要である。)。この点、被告は、引用例には、MP九六―二八タルクやMP九九―五四タルクの平均粒径の数値がいかなる測定法に基づくものか記載されていないことから、我が国において古くから採用されている粒度測定法である沈降法による数値であると理解すべき旨主張するが、前掲各証拠によりコールターカウンター法に基づくものであると認められる以上、被告の右主張は採用できない。

(2) ところで、前掲甲第一六号証によれば、沈降法のように粒子の力学的性質に基づく粒子径(有効直径)は、一般に他の測定法による径より小さい値を与えるきらいがあることが認められるが、同甲第九号証の一、二(フアイザーの一九七八年のカタログ)によれば、そこでMP九六―二八とされる製品の沈降法による平均粒径は、約八・五ミクロン程度とみられ、MP九九―五四とされる製品の沈降法による平均粒径は、約一六ミクロン程度と認められる。また、成立に争いのない甲第九号証の三(一九七一年の技術報告書および書信)によれば、製造年月日は明らかではないが、MP九六―二八タルクの沈降法による平均粒径は約一〇ミクロン程度、一九七三年製造のMP九九―五四タルクの沈降法による平均粒径は約一三~一四ミクロン程度とみられていたことが認められ、更に成立に争いのない甲第一四号証(佐々木真悟作成のタルク原料粒度測定報告書)によれば、昭和六〇年一〇月当時入手できたMP九六―二八タルクおよびMP九九―五四タルクを含む五つの試料について、コールターカウンター法と沈降法(セデイグラフ)によるタルク原料粒度の比較測定をした結果、MP九六―二八タルク(コールターカウンター法での平均粒径は二五・六三ミクロン)の沈降法による平均粒径は、約一四・五ミクロンであり、MP九九―五四タルク(コールターカウンター法での平均粒径は二六・四三ミクロン)の沈降法による平均粒径は、約一九・〇ミクロンであることが認められる。これらの事実を総合すると、引用例記載のタルク製品と、その後の製造に係る同じ符号の製品との粒度分布に大きな変動がないと仮定してみた場合には、引用例に記載されたMP九六―二八タルクの沈降法による平均粒径は、八・五~一四・五ミクロン程度とみられ、またMP九九―五四タルクのそれは一三~一九ミクロン程度といい得るものと認められる。したがつて、測定誤差、原料の産地、粉砕機の種類、粉砕の程度等を考慮に入れても、引用例記載の発明において具体例とされたマグネシア源原料であるタルクの沈降法による平均粒径をもつて、本願発明において規定された平均粒子径二一ミクロン以上のものであるということを積極的に根拠づけることもできない。

(四) しかしながら、引用例に記載された発明は、このMP九九―五四タルク等を用いる一具体例に限られるものではなく、より広く四四ミクロンの篩を通過した滑石(タルク)の粉粒体を用いる方法を含むものであることはすでに説示したとおりであるから、本件審決が、本願発明と引用例において具体例とされたMP九九―五四タルク等の平均粒径の測定法の違いを看過していたとしても、マグネシア源原料の平均粒子径の点を含めて本願発明と引用例記載の発明とは出発原料について同一であるとしたことには、何ら誤りはない。したがつて、マグネシア源原料の平均粒子径の相違をいう原告の主張は、結局、理由がないものといわざるを得ない。

3 焼成条件の相違(取消事由2)について

当事者間に争いのない本願発明の要旨によれば、本願発明の焼成条件は、「焼成過程で生ずる液相の生成を制御するため一一〇〇℃以上の温度での昇温速度を三〇℃/時間ないし三〇〇℃/時間とし、その液相から十分なコージエライト化を行わせるため一三〇〇℃ないし一四四〇℃の温度で〇・五ないし二四時間保持」するものであり、また、前掲甲第五号証(引用例)によれば、引用例記載の焼成条件は、実施例1の記載によると、「約八〇〇℃へ約五〇℃/時間で、次に約四〇℃/時間で約一四〇五℃へ加熱し、その温度を一二時間保持する」ものである(引用例五頁左下欄一六行ないし一八行)ことが認められる。そこで、両者の焼成条件を対比すると、本願発明における昇温速度は一一〇〇℃以上の温度で、三〇℃/時間ないし三〇〇℃/時間であるのに対し、引用例記載の発明における昇温速度は約八〇〇℃以上で約四〇℃/時間である。本願発明の特許請求の範囲には、昇温速度について「焼成過程で生ずる液相の生成を抑制するため」という条件が付されているが、その理由は「三〇℃/時間よりも小さい昇温速度では生成する液相が少なく十分な液相量が存在しないためコージエライト化が進まず従つて低膨脹の材料になり得ず、また三〇〇℃/時間よりも大きい昇温速度では、成形体にクラツクを生ずるから」(本願公報九欄一二行ないし一七行)にほかならない。したがつて、特許請求の範囲における「焼成過程で生ずる液相の生成を抑制するため」との記載は、要するに、昇温速度を三〇℃/時間ないし三〇〇℃/時間とした理由を説明したまでのことである。引用例記載の発明における昇温速度(約四〇℃/時間)も、正に本願発明の昇温速度の範囲内にあるから、同じように「焼成過程で生ずる液相の生成を抑制する」ものとなつているのである。更に、本願発明の要旨によれば、焼成保持温度(焼成温度)およびその保持時間(焼成時間)は、本願発明では、一三〇〇℃ないし一四四〇℃の温度で、〇・五ないし二四時間であり、前掲甲第五号証(引用例)によれば、引用例の実施例1における焼成保持温度は約一四〇五℃で保持時間は一二時間であることが認められる。そして、前掲甲第三号証によれば、本願発明において、焼成保持温度を右の範囲に限定した理由は、「一三〇〇℃よりも低い焼成保持温度では十分な液相が生成せず、従つてコージエライト化が十分起こらず、また一四四〇℃を越える焼成保持温度では、成形体が軟化して変形し易くなるから」(本願公報九欄一七行ないし二二行)であり、保持時間を〇・五ないし二四時間に限定した理由は、一〇・五時間よりも短い焼成時間ではコージエライト化の反応が十分進行せず、またコージエライト化は二四時間以内の焼成時間で完了するため、二四時間を越える焼成時間は、経済的に無意味なためである。」(同九欄二三行ないし一〇欄二行)ことが認められるから、本願発明の特許請求の範囲における「その液相から十分なコージエライト化を行わせるため」の記載は、焼成保持時間およびその保持時間を一三〇〇℃ないし一四四〇℃の温度で〇・五ないし二四時間保持するとした二つの下限の数値(一三〇〇℃と〇・五時間)を限定する理由そのものであるとみざるを得ない。右のとおり、引用例の実施例1の焼成条件は、本願発明で規定する昇温速度、焼成保持温度(本件審決にいう最高温度)、保持時間の数値範囲に包含されており、両者の焼成条件は一一〇〇℃以上の温度での昇温速度、最高温度およびその温度での保持時間において同一である。そして、昇温速度を修飾する「焼成過程で生ずる液相の生成を制御するため」の記載および「その液相から十分なコージエライト化を行わせるため」の記載は、昇温速度、焼成保持温度(最高温度)および保持時間についての数値による限定の意義以上にでるものではなく、これらと別途に具体的な選択基準を与えるものとはいえないから、この点をいう原告の主張は理由がない。なお、原告は、本願発明が相対的に粗いマグネシア源原料を使用する点を強調し、このことと焼成条件との組み合わせによる効果を主張するが、成立に争いのない甲第一五号証の一、二(タルク含有素地観察報告書および写真)によれば、平均粒子径五五ミクロンという粗粒タルクを用いた場合と二・一ミクロンのものを用いた場合では細孔の大きさに違いがあることが認められるものの、引用例記載のタルク原料が平均粒子径二・一ミクロンのものに限定されるものではないから、これをもつて、本願発明が引用例記載の発明より作用効果において優れているものと認めることはできない。したがつて、本願発明と引用例記載の発明とは焼成条件についても同一であるとした本件審決の認定判断に誤りはない。

4 焼成物の相違(取消事由3)について

本願発明および引用例記載の発明が、ともにコージエライトセラミツクスの製造法であることは、すでに認定説示したとおりであり、かつ、これまでの検討から明らかなように、両者は、出発原料の組成および量的割合、出発原料の一つであるマグネシア源原料の粒度並びに焼成条件のすべてについて異なるところがない以上、本願発明と引用例記載の発明による焼成物とに違いがあるものとは認められない。

焼成物については、本願発明の特許請求の範囲に、「焼成体の結晶相の主成分がコージエライトでスピネル、サフイリン、ムライトおよびコランダムよりなるグループから選ばれた少なくとも一種の結晶を一ないし二五重量%含有し」ているものであることが記載されているところ、原告は、引用例には、本願発明のような副結晶の開示および副結晶がもたらす効果についての開示はない旨主張するが、引用例には、前記認定のとおり「コーデイエライト結晶相が焼結基材の少なくとも九〇体積%を占める」との記載があり、また、引用例記載の発明の主願である組成が、「M-go―Al2o3―sio2系のコーデイエライト主相域中又はそれに近い所にあ」るとの記載からして、引用例記載の発明における焼成物においても、主成分がコージエライトであり、その余が副結晶として存在することが明らかである。そして、成立に争いのない乙第四号証(特開昭五一―六九五〇八号公報)によれば、本件審決も引用した右の公開特許公報には、本願発明および引用例記載の発明と同様に、タルク、粘土およびアルミナを原料とするコージエライト耐火組成物の製造法が記載されており、その焼成温度(一三九九℃~一四一〇℃)も本願発明や引用例記載の発明と同じくするところ、その第2図(図面(二)参照)にはその焼成物についてMgo―Al2o3―sio2の三成分系の三角図表が示されており、その中央部分にコージエライトの主相があり、その周囲にスピネル、ムライト、コランダム等の副結晶の相が生成されていることが認められる。右認定の事実に照らせば、Mgo―Al2o3―sio2の三成分系においては、その三成分を含有する原料を焼成し、コージエライトを生成させるに際しては、副成物としてスピネル、ムライト、コランダム等の副結晶の生成を伴うことが認められる。したがつて、引用例記載の発明において生成する副結晶が、本願発明と同様に、スピネル、ムライト、コランダム等であることは明らかである。この点の原告の主張は採用の限りでない。また、原告は、コージエライト素地に要求される低膨張と耐熱性の相乗効果を出させるには、副結晶を積極的に析出させ、これをコントロールする必要がある旨主張するが、本願発明の特許請求の範囲には、副結晶相のコントロールをなす技術が規定されてはおらず、かつ前記説示のとおり引用例記載の発明においても、コージエライトを主結晶とした粒界に他の副結晶が析出しているのであるから、耐熱性や低膨張の程度において本願発明の焼成物と異なるところはないと認められる。右の点及び平均細孔直径の点を含めて焼成物の違いをいう原告の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない事項を前提とし、もしくは本願発明と引用例記載の発明とが出発原料もしくは焼成条件の点で異なることを前提とするものであるから、すでに認定説示したところから明らかなように、その前提においてすでに失当であり到底採用できない。

5 右のとおりであるから、本願発明は引用例記載の発明と同一であるとした本件審決の結論は正当であり、本件審決には、これを取り消すべき違法の点はない。

三 よつて、その主張の点に認定判断を誤つた違法があることを理由に、本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものとして、これを棄却することとする。

〔編注〕本願発明の要旨は左のとおりである。

平均粒子径が二一ないし一〇〇ミクロンのマグネシア源原料を含み、かつシリカ四二ないし五二重量%、アルミナ三四ないし四八重量%およびマグネシア一〇ないし一八重量%よりなる化学組成を有するバツチを出発原料とし、焼成過程で生ずる液相の生成を制御するため一一〇〇℃以上の温度での昇温速度を三〇℃/時間ないし三〇〇℃/時間とし、その液相から十分なコージエライト化を行わせるため一三〇〇℃ないし一四四〇℃の温度で〇・五ないし二四時間保持し、焼成させることにより焼成体の結晶相の主成分がコージエライトでスピネル、サフイリン、ムライトおよびコランダムよりなるグループから選ばれた少なくとも一種の結晶を一ないし二五重量%含有し、二ないし五〇ミクロンの平均細孔直径を有し、二五℃から一〇〇〇℃の温度範囲での熱膨張係数が13×10-7/℃以下のコージエライトセラミツクを製造することを特徴とするコージエライトセラミツクの製造方法。

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